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京都地方裁判所 平成4年(ワ)874号 判決 1992年12月22日

原告

山下毅

ほか一名

被告

片岡敬三

主文

一  被告は原告らに対し各金二九五四万六七〇七円及びこれに対する平成二年八月三日から支払い済みまで年五%の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その一を原告らの、その余を被告の負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求の趣旨

被告は原告らに対し各金三八三一万〇三〇八円及びこれに対する平成二年八月三日から支払いずみまで年五%の割合による金員を支払え。

第二争いのない事実

一  当事者

原告らは後記二の交通事故によつて死亡した訴外亡山下真吾(以下、亡真吾という。)の父母である。亡真吾には原告ら以外に相続人はなく、原告らは各二分の一の相続権者である。

二  本件交通事故の発生

亡真吾は平成二年八月三日に左記交通事故によつて頭蓋底骨折等の傷害を受け、死亡した。

1  事故発生日時 平成二年八月三日午前二時五五分ころ

2  発生場所 京都府北桑田郡美山町大字静原小字山戸谷二四番地先、国道一六二号線

3  運転者 被告

4  車両 普通乗用自動車 京五八ほ七四六八(以下、本件車という。)

5  被害者 亡真吾

6  事故態様 被告が本件車を運転して国道一六二号線を福井県小浜方面に走行中、制限速度を大きく上まわる速度で無謀な運転をして道路端の電柱に激突し、本件車の助手席に同乗していた亡真吾を頭蓋底骨折等により即死させたもの。

三  被告の責任

1  本件事故は被告が制限速度(時速四〇km)を四〇キロメートル以上も超える、時速八〇キロメートル以上で走行する無謀な運転をし、道路端の樹木に衝突し、次いでコンクリート電柱に激突したものである。

2  本件事故は被告の速度違反、安全運転違反の過失によるものである(民法七〇九条)。

四  亡真吾は事故当時二〇才で、早稲田大学商学部三年生の大学生であり、原告ら夫婦の長男である。

第三争点

一  被告は損害額を争つている。

二  さらに、被告は亡真吾は好意同乗者であり、損害額を減額すべきであると主張している。

第四争点に対する判断

一  損害

1  葬儀費用(二二七万八八五〇円請求) 一〇〇万円

2  逸失利益(同額請求) 四九三四万一七六八円

右亡真吾は本件交通事故当時二〇才であり、早稲田大学商学部三年生の大学生であつたので、この事故がなければ二年後には右大学を卒業し、しかも原告毅が代表者となつている、社歴四〇年以上を有し、年商約四〇億円、社員約四五名の株式会社やましたの経営者の地位につくことが確定的であつた者である(甲二、五、七、一一ないし一三、原告毅)。したがつて、亡真吾は、賃金センサスの新大卒の全年令平均収入額を基礎にするのが相当である。

賃金センサス平成二年第一巻第一表、企業規模計、男子労働者、旧大、新大卒全年令平均の年収額 六一二万一二〇〇円

亡真吾の卒業時年令二二才、それ以後の就労可能年数 四五年

ライプニツツ係数(四五年) 一六・一二一六

179810(47年)-18594(2年)=16.1216

生活費控除 五〇%

逸失利益額 四九三四万一七六八円(円未満切り捨て)

6,121,200×16.1216×0.5=49,341,768,96

3  慰謝料(同額請求) 二〇〇〇万円

二  好意同乗による損害減額の主張について

証拠(甲五、乙二ないし四、乙八、九)によれば、次の事実を認定することができる。

1  ドライブの約束

被告と亡真吾とは小、中学校時代の同級生であり、亡真吾が夏休みなどで京都に帰省したときは、よく二人を含めた同級生が集まつて遊んでいた間柄である。本件事故前の平成二年七月二八日夜、喫茶店で被告と亡真吾と訴外太田啓史の三人が集つて福井県小浜の海へ遊びに行く約束がされ、八月三日午前〇時頃出発した。

2  本件車の所有者

訴外太田は自分の車で、そして被告と亡真吾は亡真吾の車で海へ行くことになつたものである。被告と亡真吾とが同乗した本件車は、正確には亡真吾の父原告毅が経営する株式会社やましたの所有であるが、亡真吾も運転することを許されていた車である。

3  事故前の状況

亡真吾は高校を卒業してすぐ運転免許を取得したもので、二年以上の運転歴を有している。これに反して、被告は平成二年六月七日に免許を取得したばかりであり、事故発生日まで二月に満たず、また、通勤用には車を使用せず、仕事の休日に運転していたものである。また被告は本件車を事故前まで二、三回運転したことがある。

本件車の運転は、当初、亡真吾がしていたが、北桑田郡美山町の農協のところで、亡真吾は「疲れたから替わつてくれ」と言つて被告に運転を交替し、助手席に座つた。被告は運転を始めて時速約八〇キロでずつと走り、九鬼ケ坂というヘアピンカーブが続くところで、時速五〇キロメートルくらにい減速し、ヘアピンカーブを過ぎて事故現場付近に来たときに再びスピードを上げて時速八〇キロメートルくらいで走行していた。このように走行はほとんど八〇キロくらいで走つていた。農協を出発して事故現場までの約一〇分間に、亡真吾は「敬三、タイヤが鳴つているぞ。」と一回声を掛けたことがあつた。

4  本件事故の発生

事故現場はなだらかな直線の下り坂が続き、そこから左に曲がつているところである。被告は本件車を運転して時速約八〇キロで進行し、その後方を訴外太田の運転する車が続いたが、前方に別の軽四輪自動車が走つていて左に曲がつて行くのを認めた。被告は道路が直線になつたらこの車を追い越そうかと考えながら、左にカーブを曲がつたところ、その軽四輪自動車の前がまたカーブになつていたので追い越せないと思つているうちに軽四輪自動車のすぐ後ろまで近づいた。そこで、被告は減速するためブレーキを強めに踏んだところ、ハンドルを取られて車体が左にスピンして進行方向の反対側に飛び出し、杉の木に衝突したものである。

以上の事実を認定することができる。

以上の事実を前提として好意同乗による減額をするかどうかにつき判断する。

本件車に乗つてドライブする目的は被告及び亡真吾とも一緒に小浜の海に行くためであり、その運行利益は両者に共通であるといえる。

本件車を運転していたのは被告であるが、本件車は前述の通り亡真吾の父である原告毅の経営する会社の所有する車である。したがつて、本件車が同乗者側の所有に属する場合で、被害者亡真吾側の原告らが運行を支配するものであると見られる余地がないわけではない。

加えて、本件事故は深夜のドライブであり、夜のドライブはスピードの出し過ぎになりやすくまた道路の曲がり具合が予測しにくく、事故に直結し易いことはドライバーの常識である。その一般的事実を認識しながら亡真吾は同乗したものである。さらに、亡真吾は、運転免許を取つて二カ月に満たない(亡真吾はこの事実を知つていたものと推察される。)被告に運転させ、「タイヤが鳴つているぞ」と一言注意をしただけであつた。しかし、亡真吾は、被告が時速約八〇キロメートルをもつて走行し、強めのブレーキをかけるなどの無謀な運転をすることまで予想していなかつたものとみるのが相当である。

以上を勘案すると、原告らの請求の二〇%が減額されるべきである。

したがつて、右一の損害七〇三四万一七六八円を減ずると五六二七万三四一四円(円未満切り捨て)となる。

三  弁護士費用(各二五〇万円請求) 二八二万円(原告ら各一四一万円)

四  損害の相続など 原告ら 各二九五四万六七〇七円

(裁判官 小北陽三)

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